フッ素樹脂加工大手の中興化成工業(東京、木曽節文社長)はこのほど、長崎県松浦市に設立したSC新工場で竣工式を行い、自動車用エアバッグ事業への本格参入を果たした。
新工場には、随所に最新のテクノロジーを導入し品質向上を図ったとしており、「松浦ブランドを世界中に知らしめたい」と意欲的な取り組みを立ち上げた。日本でも今後、急速に普及していくと見られるカーテンエアバッグ。中興化成工業の戦略を追った。
SC新工場が竣工
中興化成工業は、フッ素樹脂のコーティングを主力に展開する大手メーカー。
年商は100億円弱。基幹商品の恒久屋根膜材「フッ素樹脂膜材」は東京ドーム(天井の内幕)に使われているほか、北京オリンピック・メーンスタジアムの屋根材にも採用されている。
事業拡大の一環として、04年10月にスペシャリティ・コーティング事業部を設立。松浦第3工場内にシリコン樹脂コーティングのパイロットプラントを導入し、カーテンエアバッグ狙いの開発と取り組んできた。その後、06年4月に12億円の設備投資でSC工場建設に着手。11月に完成させ、このほど竣工式を行なったもの。
同社は日本、韓国、イタリアなど7カ国から最新のパーツを調達しコーティングマシンに組み上げた。生産能力は年産650万平方メートル。加工できるのは幅2メートル80センチまで。
カーテンエアバッグの場合、車内の側面計上に合わせた複雑な立体構造に設計されるため、樹脂をエアバッグ布に均一にコーティングするのが難しいという。
この点を同社は長年の技術の蓄積で解消。新しいマシンで加工されるエアバッグ布の剥離(はくり)強度は既存品の10倍程度に引き上げられ、「格段に品質を向上させることができた」としている。
テクニカルTXの横展開も
松浦工場には住友商事、住江織物、旭化成せんいが合弁で設立したエアバッグ用ナイロン66織物を製造する住商・エアバッグシステムズが隣接しており、SC工場にはここからエアバッグ布が供給される。
両社が展開するのは、ジャカード織機で一気に袋状に織り上げるワンピースウーブン(OPW)タイプのカーテンエアバッグ。エアバッグにはナイロン66の平織りを裁断・縫製して商品化されるカットソーと呼ばれるタイプもある。
カーテンエアバッグの場合、車が横転を続ける数秒の間、膨らみっ放しの状態を維持できる気密性が要求される。縫い目のないOPWは気密性の面でカットソーよりも優れているため、今のところカーテンエアバッグにはOPWがマッチするといわれている。
欧米では、既にカーテンエアバッグの普及率が50%程度に達するものの、「日本はせいぜい4-5%」と見られている。
しかし、日本でも今後、急速に浸透するとの見方が強く、ナイロン66を展開する東レ、東洋紡は小刻みな増産で需要増に対応している。一度は撤退した旭化成ケミカルズが再参入したのも、このカーテンエアバッグを狙ってのものだ。
SC工場のある松浦市はアジやサバの漁獲高で日本一を誇る港町。中興化成工業は「われわれはエアバッグで日本一を目指す」との目標を掲げている。07年度末までに年産650万平方メートルをフル稼働させた後、「直ちに第2系列の導入に着手したい」との意気込みを示しており、カーテンエアバッグにおけるナンバーワンシェアを目指すとともに、テクニカルテキスタイルへの横展開を狙った取り組みが滑り出した。