
輻射(ふくしゃ)放熱シートとは、熱伝導率の高いアルミフィルムに輻射率の高い放熱塗料をコーティングし、テープ加工した製品です。
この記事では、貼るだけで放熱する輻射放熱シート「PAL-350A」の特徴や用途について詳しく解説していきます。
目次
・輻射(ふくしゃ)とは?
・輻射放熱シート「PAL-350A」とは?
・輻射放熱シート「PAL-350A」の特徴
・輻射放熱シート「PAL-350A」の製品規格・性能・構造
・輻射放熱シート「PAL-350A」の使用方法・利用シーン
・放熱効果について
・まとめ
輻射(ふくしゃ)とは?
輻射放熱シートの「輻射(ふくしゃ)」とは、物体の表面から放出される赤外線などの電磁波によって熱が空間を伝わる現象のことを指します。
これは物質同士が接触して熱が直接伝わる「熱伝導」や空気や液体などの流れによって熱が運ばれる「対流」とは異なる熱移動の方法のひとつです。
真空中でも伝わるという特性があり、空気や接触を必要としないため、意外なところで熱の伝達経路になっていることがあります。
例えば、発熱するICパッケージが密閉筐体内にあると、隣接部品や筐体内壁に輻射熱が直接届き、局所的な温度上昇を招くケースがあります。こうした“見えない熱”を考慮しないと、「シュミレーション通りに冷えない」、「部品の信頼性が落ちる」といった問題につながりかねません。
輻射放熱シート「PAL-350A」とは?
輻射放熱シートは2024年に当社が初めて製造、販売する放熱部材として、貼り付け可能な赤外線変換による熱拡散シートです。熱伝導率の高いアルミフィルムを基材とし、輻射率の高い放熱塗料をコーティングしたものに粘着剤を塗布した製品です。熱を電磁波(遠赤外線)エネルギーへ変換させる輻射放熱により熱拡散を行います。また、基材がアルミフィルムのため一定の電磁波シールド効果を発揮し、高周波(@1Ghz~6Ghz)において約50dBほどの減衰効果があります。さらに、輻射率の高い放熱塗料にふっ素樹脂を混ぜているため、耐候性も持ち合わせています。
近年、多くの電子機器は高性能化と小型化が進み、また高速・大容量通信にARやVRなども加わることで、通信基地局等の熱対策はより重要な社会課題となります。この課題において、当社が貢献できることとして、長年にわたるふっ素樹脂のコーティング技術を生かせる製品を開発するに至りました。
輻射放熱シート「PAL-350A」の特徴
1.発熱体に直接貼り付けることで輻射放熱による熱拡散効果を付与できます。
2.総厚が約110μmほどと薄いため、冷却におけるスペース削減と軽量化に対応できます。
3.アルミフィルム基材のため、電磁波シールド効果も同時に発揮できます。
4.指定形状への抜き加工が可能で、対象物に合わせた対応をいたします。
※KEC法により測定
※上記の数値は測定値であり、規格値ではありません。
輻射放熱シート「PAL-350A」の製品規格・性能・構造
●製品規格
厚み(mm) | 規格品幅(mm) | 長さ(m) | |
---|---|---|---|
0.11 | 480 | 1~45 |
●製品性能
試験項目 | PAL-350A | |
---|---|---|
放射率(ε) | 0.91 | |
最高使用温度(℃) | 150 |
●構造
輻射放熱シート「PAL-350A」の使用方法・利用シーン
白い剥離紙を剥がして貼るだけで使用できます。また、お客様の需要に応じてセパレーターをオリジナルのものにカスタマイズすれば、既存の自動吸着機を利用し、セパレーターを吸着機で剥がし、貼ることも可能と考えています。
利用シーンは、工業用モーターなどの発熱部品や制御盤、電装ボックス内の熱源対策、電磁波を嫌う場所を想定しています。インバーターリレー、電源回路など熱源が集中する制御盤ではクーラーやファンに加えて、放熱シートで熱を効率よく逃がす工夫がされています。輻射放熱シートを筐体の内壁または熱源部品の上に配置することで、外部への熱拡散を促進させることができます。 一般的に電子機器は種類によって異なりますが、耐熱仕様の場合でも85℃程度が動作温度範囲の上限と言われています。そのため、機器の設計段階から適切な放熱対策をとることが重要ですが、電子機器の冷却にはクーラーやファンなど電気が使用され、CO₂が排出されています。当社の輻射放熱シート「PAL-350A」を他の放熱部材と併用することで電気消費量が抑えられ、CO₂の排出削減につながります。
また、当社の輻射放熱シートはふっ素樹脂の特性である「耐候性」を生かして屋外でも使用できるため、使用場所を選びません。加えて、カットや指定形状への抜き加工が可能なため、貼り付ける対象物に合わせた状態で納品をいたします。

※本画像はイメージです。実際の製品とは異なる場合があります。
放熱効果について
社内試験の結果、放熱効果について使用サイズが大きいほど放熱効果が高くなり、発熱体の温度にも変化が出ることが確認されました。
1)13mm×13mmの発熱体に対し、50mm×50mmの輻射放熱シート「PAL-350A」を貼った場合、放熱効果が約38℃ありました。(図1,2)
試験方法:発熱体をICチップに見立て、10分後の発熱体の温度を計測
【図1】
【図2】
2)使用サイズが大きいほど放熱効果が高くなります。
【図3】
輻射放熱シート「PAL-350A」の寸法と10分後の発熱体の温度を計測
輻射放熱シートPAL-350Aの寸法(mm) | 発熱体の温度(℃) |
---|---|
シートなし | 99.3(-) |
14×14 | 98.2(-1.1) |
20×20 | 86.4(-12.9) |
25×25 | 80.0(-19.3) |
30×30 | 73.4(-25.9) |
40×40 | 65.4(-33.9) |
50×50 | 61.2(-38.1) |
※いずれも測定値であり、規格値ではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
輻射放熱シート「PAL-350A」は高温・熱制御対策向けの粘着剤付きシートです。 お客様のご要望に応じて指定形状への抜き加工も可能な製品となっています。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
輻射放熱シート「PAL-350A」の詳細は下記をご覧ください。
https://www.chukoh.co.jp/products/tape/pal350a/