医療機器や医療・生物学の研究分野は日々進化しています。特に医療の現場では体に負担の少ない「低侵襲の腹腔鏡手術」や「ロボット手術」「遠隔手術」など、新しい治療方法が提供されてきています。それらの方法が実施できているのは最先端の医療機器に使われる新素材の研究や部品開発がおこなわれ、技術力が進歩しているからではないでしょうか。
この記事では、医療機器や研究開発の場面で活躍しているふっ素樹脂の特徴や将来の最先端技術に貢献できるかもしれない当社製品の特徴について解説いたします。
目次
●ふっ素樹脂(PTFE)とは?
●重宝されるふっ素樹脂の特性とは?
・耐熱性
・純粋性
・耐薬品性
・クリーン性(生体適合性)
・滑り性
・非粘着性
・撥水性
●ふっ素樹脂製薄肉チューブとその用途例
・ふっ素樹脂製薄肉チューブについて
・医療現場での用途例(カテーテル、手術器具)
・加工例について
●ふっ素樹脂製多孔質製品(C-Porus™)とその用途例
・ふっ素樹脂多孔質フィルム
・ふっ素樹脂多孔質チューブ
・研究現場での用途例(フィルター・細胞培養の足場材)
・加工例について
・まとめ
ふっ素樹脂(PTFE)とは?
ふっ素樹脂とは、フッ素原子を含むプラスチック原料の総称です。通称テフロン™とも呼ばれており、 PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)をはじめとする9品種があります。耐熱性、滑り性、非粘着性、耐薬品性、低摩擦性、絶縁性に優れた性質を同時に兼ね備えるプラスチックで 1つのプラスチック樹脂が多くの特性をもつことは珍しいため、ふっ素樹脂は“最後の砦の樹脂“といわれています。
重宝されるふっ素樹脂の特性とは?
ふっ素樹脂は、現代の様々な産業でなくてはならない存在となっています。 ふっ素樹脂の特性である耐熱性、純粋性、耐薬品性、生体適合性、滑り性、非粘着性、撥水性などは、医療、化学、食品、電子、建築など幅広い産業で幅広く活躍し、信頼性の高い材料として世界中で重宝されています。 以下では、ふっ素樹脂が広く重宝される理由となる特性について詳しく解説します。
耐熱性
プラスチックの中ではトップクラスの耐熱性を持つふっ素樹脂。ふっ素樹脂の1つである「PTFE」の融点は327℃と高温で、オートクレーブや高温での滅菌処理にも耐えることができ、高温下でも劣化しにくいことから長期間の使用が可能になります。
また、耐寒性もトップクラスで約-180℃まで使用できるため、低温保存が必要な医薬品や血液を扱う際にも適しています。
純粋性
薬液への不純物の溶出がほとんどなく、薬品の純度をそのままに保持できるふっ素樹脂。化学薬品に不活性であり、ふっ素イオンの溶出、金属・有機系異物などを究極まで抑えることが可能です。ふっ素樹脂製品を使用することで薬剤や試薬の品質を保つことができます。
耐薬品
安定した分子構造を持ち、ほとんどの薬液や溶剤におかされることがないふっ素樹脂。強酸や強アルカリに触れても劣化を起こしにくい性質で、頻繁に消毒・洗浄が求められる環境下でも、安心して使用することができます。
クリーン性(生体適合性)
体内で使用しても異物反応や拒絶反応をほとんど、引き起こさないふっ素樹脂。血液や体液と接触しても成分が変化しにくいため、信頼性が高く、一般的には医療機器の部品素材としても使用されています。
滑り性
あらゆる個体の中で最小の動摩擦係数を持つふっ素樹脂。非常に滑りやすく、表面も滑らかであるため、精密な操作が必要な手術やカテーテル治療など、医療機器を介してふっ素樹脂の「滑りやすさ」は繊細な手技を支えています。
非粘着性
いかなる物質もくっつかない性質をもつふっ素樹脂。血液や体液、細胞組織などが表面に付着しにくいため、衛生面の維持にも役立ちます。万が一物質が付着した場合でも、容易に取り除くことができます。
撥水性
水や油などさまざまな液体をよく弾くふっ素樹脂。表面エネルギー(表面張力)が低く、水や油との表面張力の差が大きいため、濡れにくくほとんどの液体を弾きます。汚れも付きにくいため、簡単に洗浄することができます。
ふっ素樹脂製薄肉チューブとその用途例
ふっ素樹脂製薄肉チューブについて
ふっ素樹脂製薄肉チューブは、ふっ素樹脂(PTFE)を薄肉のチューブ状に成型した製品です。液切れがよく、摺動性、耐薬品性、生体適合性にも優れており、医療機器の内層材として使用されています。
医療現場では、機器や器具に対する耐久性や安全性、さらには清潔性が求められますが、ふっ素樹脂製薄肉チューブはその要件を満たし、多くの医療用途に適しています。
当社ではマルチルーメンや接着処理など、様々な加工も可能です。
医療現場での用途例(カテーテル、手術器具)
◎カテーテルの内層材
◎内視鏡の鉗子口、処置具
・加工例について
ブレード加工、テーパー加工、接着処理など様々な加工を行っています。
◎ブレード加工
◎テーパー加工
ふっ素樹脂製多孔質製品とその用途例
ふっ素樹脂多孔質フィルムについて
ふっ素樹脂多孔質フィルムはふっ素樹脂(PTFE)を多孔質化し、フィルム状にした製品です。ふっ素樹脂の特性である耐熱性、耐薬品性、耐候性、生体適合性などを保持しながら柔軟性、通気性、撥水性を兼ね備えているため、感染防止と衛生維持が重要な医療機関で重宝されています。
ふっ素樹脂多孔質チューブについて
ふっ素樹脂多孔質チューブはふっ素樹脂(PTFE)をチューブ状にした製品です。微細孔により通気性透湿性をもちながらも防水、撥水機能を兼ね備えています。多孔質チューブは曲がりやすく柔軟なため、ケーブルの保護材などにも使用されています。
研究現場での用途例(フィルター・細胞培養の足場材)
◎ベントやフィルター
◎細胞培養の足場材
加工例について
直径約1mmの微細なパンチング加工、用途に合わせて不織布やメッシュガラスクロス等を複合させることも可能です。
◎パンチング加工
◎多孔質フィルム複合品
・ガラスクロス×多孔質フィルム
まとめ
当社の医療機器用途向けのふっ素樹脂製品についてご紹介いたしました。
ふっ素樹脂は、純粋性や耐薬品性を同時にもっている樹脂のため医療機器の開発現場に欠かせない素材となっています。
当社では、60年以上にわたりふっ素樹脂製品を製造してきた技術力があります。
お客様の課題を解決できる製品を取り揃えております。まずは試してみたいという方、お客様の課題を解決する製品を製造してほしいという方はお気軽にお問い合わせください。